自分探しに

自分探しに

「ほんとうの自分」を探しに行くのは「今、ここ、自分」から離れたところです。 「あなたのことを知っている人が誰もいないところ」に行くのです。
それが俗に言う「自分探しの旅」というやつです。 「あなたのことを誰も知らないところ」にいかないと、 自分探しが出来ないなんて、ちょっとおかしな話ですよね。
でも、それは間違いではないんです。 なぜなら「ほんとうの自分」なんてシロモノ自体がちょっとおかしいからです。 僕たちが「ほんとうの自分」に出会うのは、
僕たちのことを何も知らない人間に向かって「自分の過去」を物語るときです。 「私のことをまったく知らない人間」じゃないと困るんです。 だって、「ほんとうの自分」なんてのは嘘ばっかりなんですから。 まあ、嘘というのはちょっといいすぎですけどね。 厳密には嘘ではなくて、 過去にあった事実を、自分の都合の良いように選択的に回想するんです。 相手に心清い人間だと思って欲しければ、過去に行った善い行いなんていくらでも語れますし、 相手に醜い人間だと思って欲しければ、過去に行った醜い行いなんてのもいくらでも語れます。 その人が「心清い人間」だとか「醜い人間」だとかが初めから決まっているわけではなくて、 「相手にどう思って欲しいか」によって僕たちの語る「自分史」は変容するのです。だから、「自分探し」をするときには、自分の過去がべっとりと張り付いている場所から離れないとダメなのです。